クールから国境を越えてイタリアのティラーノまでを結ぶベルニナ特急は、ルートの大半が世界遺産に登録されている美観地区を走ります。有名なループ橋、ベルニナ山群、迫力ある氷河などの見どころが2時間半の乗車時間に凝縮されているので、鉄道の旅が初めてでも飽きずに楽しめます。
そんな魅力的なベルニナ鉄道の、見逃せない絶景ポイントや、楽しむためのヒントをご紹介します。
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ベルニナ・エクスプレスに乗るために、ホテルでチーズとパンがメインの朝食をとり、足早にクール駅に。クール駅からティラーノまでは一日一本、朝8時30分発車の列車に乗らなくてはなりません。
本来のベルニナ特急の見どころは、サンモリッツからティラーノまでの2時間半。往路はサンモリッツで下車し宿泊する予定だったので、始発で乗車時間が長く、クールからサン・モリッツまでは違う景色が楽しめるので、あえてベルニナ特急の停車駅であるクールを選びました。
クールから二時間ほど先にあるサン・モリッツから乗車すれば、午前と午後の一日2本乗車できます。ティラノからの往路も一日2本あるので、サンモリッツを拠点とすれば、往復ベルニナ特急を満喫できるはずです。
クール、ダヴォス、サン・モリッツのグラウビュンデン州の3つの駅を発着地とするベルニナ・エクスプレス。サン・モリッツからイタリア北部ティラーノまでのベルニナ線区間は世界遺産のルートです。
パノラマ車両は座席指定料が必要ですが、普通列車なら乗車券があれば予約しなくても乗ることができます。1等車と2等車があり、夏の天気のいい日にはオープンエアの車両が連結されることも。こちらは予約が必要です。短区間だけでも乗れますが、全席座席指定で座席予約が必要です。スイスパス保持者は座席予約料のみで乗れます。
峠を越えて南北を移動するため、気候の変化があり、さらにルート上は1800m以上の標高差があるため、車窓の風景が次々に変わっていきます。ドイツ語圏、ロマンシュ語圏、イタリア語圏にまたがるために、街の雰囲気の違いを感じることもできます。沿岸の各所にハイキングコースがあるので、途中下車して歩いてみるのも楽しいでしょう。
車窓風景を楽しむのに、窓の大きなパノラマ車両は向いていますが、窓を開けることができないので、写真を撮りたい人は同じ路線を走る普通列車に乗るのもおすすめです。パノラマ車両にこだわらければ、1時間に1本の割合で急行列車や普通列車が走っています。
周辺には氷河や湖などの見どころが多数点在しています。満喫するにはパノラマ車両(座席予約・追加料金が必要)がおすすめです。撮影の場合は、窓にカメラをぴったりくっつけるのがコツです。映り込みを防げます。
食堂車は連結されていません。先頭車両以外は車内販売があるので、食料を用意していなくても、お腹を満たすものは入手可能です。でもせっかくイタリアまで行くのですから、ティラーのイタリア料理を楽しみましょう。
ドイツ語圏、ロマンシュ語圏、イタリア語圏を走るこのルートでは、地名などが二か国語で表記されていることも多いです。チェッしてみるのも面白いでしょう。
標高差を克服するために360度の円を描いたループトンネルはよくありますが、ここはそのループが地上に出ている『オープンループ橋』という珍しい橋です。進行方向右側に注目して見ていると、橋の構造がよくわかります。普通列車なら、ブルージオ駅で下車して歩いて近づくこともできます。
この橋は、スイスの鉄道でみられる一般的な自然の地形を利用したループラインではなく、完全に人口の橋です。真上から見てもほぼ正円になっているのが特徴で、車内から別の車両がばっちり見えるくらいぐるりと回るループラインは、ベルニナ特急のハイライトです。
ベルニナ特急の人気の秘密は、風景が変わる車窓の変化だけではありません。路線のほとんどが単線で、上り列車と下り列車は各駅や行き違い設備で、待ち合わせながらすれ違います。ループトンネルやループ橋も多く、特にブルージオ駅を出て3分後に通過する、くるりと見事に円を描くオープンループが有名です。
スイスとイタリアの国境を越えると、路面電車のように道路と並行して走ります。それまで自然がいっぱい広がっていた車窓に、いきなり人々の生活が飛び込んでくるようで、そのギャップがおもしろい区間です。路面電車の区間に入ったら終点のティラーノもうすぐです。
国境をいつ越えるのだろうかと車窓から風景を眺めていても、どこで国境を越えたのか分からないくらい自然に、スイスからイタリアへ。背の高いティラーノ教会が見えたらそこはもうイタリアです。ベルニナ特急はじめ、スイスからの列車が着くティラーノ駅。駅を出ると右手にイタリア国鉄ティラーノ駅があります。
12時半に到着。帰りの14時の列車出発時間まで、イタリ気分を満喫するためにイタリア料理を食べます。ここはイタリアなので、ご飯代はユーロに両替をした方が良いでしょう。レストランはカードが使えますが、小さな路面店は現金支払い(ユーロかスイスフラン)です。
フランも使えるのですが、手数料が込みなのか200円くらいは割高になります。ユーロに両替する手間は省けるので、考え次第ですが、少しでも節約したい場合は少額でもユーロを用意した方が良いでしょう。
イタリアのティラーノまで行く場合は、国境を越える際に検札などはありませんが、スイスの国境を越えるので念のためパスポートは忘れずに持参して下さい。駅で時期により簡単な入国審査が行われる場合もあるそうです。
イタリアのティラノ駅から、来た道をベルニナ特急でサン・モリッツまで戻ります。14時に出て約2時間半の16時半に到着。ショッピングや美食が楽しめる、スイスを代表する高級リゾート地。氷河特急やベルニナ特急の発着駅でもあり、駅の売店も充実しています。
30度を超える真夏に訪れても、標高1856mにあるこの街は、いつも爽やかな空気に満ちています。過去2度冬期オリンピックの会場となった街で、いつも静かで落ち着いた雰囲気。さすが国内屈指の高級リゾートです。
サン・モリッツの中心ドルフ地区は、観光や交通の中心となり、徒歩で回れます。鉄道で到着した場合、サン・モリッツ駅はドルフ地区のはずれの一番低い所にあるので、高台にある中心部へ行くにはタクシーを利用した方が良いです。
町はリゾート色が強く、観光的な見どころは少ないので、観光するには半日もあれば十分です。有名ブランド店や高級時計店が軒を連ねているので、ハイブランドのお店が多く、ウィンドーショッピングも楽しめますよ。高価すぎて購買意欲は沸きませんでしたが・・・。周辺にはリゾートホテルが点在して建っています。
サン・モリッツに滞在する場合、持参すると良い物は、水着や少しドレスアップできる服。積極的にプールやカジノ、人気のレストランなどへ出かけ、リッチなリゾートライフを楽しむのも良いでしょう。
観光地サン・モリッツの中心。湖の周りは4kmの遊歩道になっており、散策やジョギングを楽しむ人たちが行きかいます。春から秋は早朝に霧がかかり幻想的です。
冬は湖が凍結します。その凍結した湖の上で行われるのが氷上競馬。毛皮のコートに身を包んだヨーロッパ社交界の人々が集い、馬券を買って声援を送ります。世界でも珍しいそうです。
ホテルは『Hotel Bellaval』一泊CHF300以上もする高級リゾートホテルが多いサンモリッツで、格安のホテルを探すのは大変です。このホテルは駅の通路から直接行けて価格も一泊CHF140。エレベーターは無く少し古い建物でしたが、窓からは湖が見え大変満足しました。共用バスルームで、トイレは廊下にあり、各部屋には洗面台が付いています。
ホテルの一階にはスイス料理レストランがあります。高級リゾートなので、街歩きをした時に探したレストランはかなり高めだったので、迷わずホテル下のレストランで。ホテル自体がかなり安く設定されているので、このレストランは大盛況でした。
もしサンモリッツとティラーノを往復するなら、どちらかを普通列車にして、途中下車して歩いてみるのも良いです。線路と湖の間にハイキングコースが設けられています。
鉄道ファンでは無くても、乗る価値のあるベルニナ特急。遙か日本を離れ、平日の白昼、アルプスの山岳列車に揺られながら、こんな凄い大パノラマを目にするなんて全く予期していませんでした。サンモリッツ行きの普通列車2等はガラ空きだったので、座席指定は必要無かったのですが、念のため日本で予約していくのが得策です。